2011年4月30日土曜日

Namibia: Namib desert: 地の果て

[ナミビア ~ナミブ砂漠~]

先にあるのは地平線だけ!
世界一周で絶対行きたいと思っていたNamib desert(ナミブ砂漠)

ナミブ砂漠は、Namib-Naukluft National Parkの一部にある、世界で一番古いといわれている砂漠。
私の中では、アフリカの砂漠というと、広大なサハラもいいけど、あのいかにも~って感じの砂丘がある、ナミブ砂漠のほうがイメージぴったりだった(のでとても憧れていた)。

Buffy(バフィー)が快くランドクルーザーを貸してくれたお陰でレンタカー代を心配する必要もなく、また、Buffyの友達が寝袋、料理道具一式、薪にいたるまで全てを貸してくれたお陰でこれもレンタルが不必要で、本当に助かった~!


出発当日、Buffyが厳しい顔をして夫のToby(トビー)に、「車に水入れてあげた?水のタンク車に入ってる?」と何回も確認していた。何本か水をスーパーで買ってから行こうと思ってたから、まだ車に積んでなくても大丈夫だろうと楽観視してた私たちは、何事だろうと聞いてみたら、以前起こったある事件について教えてくれた。

2003年、ずっと温めていた、「退職してアフリカ大陸を車で回る」という夢をオランダ人老夫婦が実現し、色んな所を回った後にナミビアを訪れた。
ところが、本当に周りに何もない砂漠でガス欠に。
あまりにも交通が少ないので困っていたら、ラッキーな事に丁度ツアーグループが通りかかり(多分、高くてうちらが諦めた類のツアー)、偶然Buffyの友達でもあるツアー添乗員の人が、次のガソリンスタンドに行くために充分なガソリンと水を渡した。来た道を2時間戻れば、辛うじてガソリンスタンドのある小さな町に着くから、ちゃんと行くように言い残して。

ところが、戻るのが嫌だったのか、目的地が近いからそちらを試そうと思ったのか、道を戻らずに先に進み、更には今度は更に交通が少ない道に入ってしまった老夫婦。Buffy曰く、この辺で観光客が犯しやすい過ちのひとつが、地図をみて地名がある=町があると思い込んでしまうことらしい。でも、実際私たちも運転してわかったけど、この辺は、地図上は知名があれど、何もない所だらけ。日光を遮る木さえも一本もない。この老夫婦もその過ちを犯してしまったのかもしれない。

勿論、あると思っていた町はなく、再度ガス欠に陥ってしまった。
待てども待てども、車は通らず。
乾燥している砂漠で直射日光を浴びる車は45度近く。そして、水も瞬く間になくなり、最悪の事態に。持病で元々心臓の悪かった夫の方は、脱水症状で心臓発作が起きてしまい、奥さんの膝の上で亡くなってしまった。
その後も、奥さんは極度の脱水症状になりながら、ボンネットを開け、ウィンドーウォッシャー用の水を細々と飲みながら生き延びていた。最終的に保護されたのは12日後。奥さんもかなり衰弱していて、死が近かったとか。
なんでも、レンタカー会社は車の返却期限が過ぎても気にしなかったらしく、更に数日後、二人が乗るはずだった飛行機に搭乗しなかったため、不審に思った航空会社から大使館に連絡が行き、漸く操作が開始したため発見が遅れたらしい。

こういうもしもの時、最悪の状況に陥ることも少なくないので、ナミビアの人は、水だけは必ず50Lぐらいのタンクいっぱいに入れてバックシートに積んでおくんだとか。 
話を聞いてちょっとビビッてしまった…。自然ってやっぱりなめると怖い。


さあ、車いっぱいに荷物を積んで、いよいよ出発。
まずは、スーパーで食料を補給。やっぱりキャンプと言えばBBQ!水も更に10L位買った。
あと、後々本当に良かったと思ったのがここで買ったスポーツドリンクの粉末。これはキャンプ道具一式を貸してくれた、ナミビアで何度もキャンプをしているお友達からお勧めされていたもの。


そして、いざ出発!
Swakopmund(スワコップムンド)から405km。
クーラーは壊れているので、窓を開けて風を受けながらの爽快なドライブ!
砂漠で暑いといえども、日本の夏のような湿気を帯びたむんむんの熱気とは違い、ここではドライヒートなので車の中(=陰)で風を受けて走っていれば問題なし!涼しいくらい。
途中止まって休憩したときは暑かったけど。

それにしても、本当に何もない!
広大な大地が延々と続く。
私は、その広大な大地と空を求めてわざわざアイオワ州の大学を選んだくらいこういう景色が大好きなんだけど、アメリカの中西部なんか目じゃない!道路は舗装されていないし、交通も全くなし。
6時間走って、すれ違った車は…10台以下?!
スカッと気持ちいい~~~!!!

何もない所にぽつーんと現れた、"Tropic of Capricorn"(南回帰線)の看板の前でも記念写真をパチリ。この先は、もうトロピカルじゃないんだね~なんて言いながら。


ナミブ砂漠は広く、行こうと思えば色んな所に行けるんだろうけど、アクセスの良く観光客がメインに行く(そして「あの」Dune 45のある)一帯の入り口が、Sesriem(セスリエム)。
私たちは、Solitaire(ソリティア)とSesriem(セスリエム)の間にある、これまたお友達お勧めの安くてきれいなキャンプ場、Agama River Campへ。


おにぎりとBBQ
砂漠に近づくにつれ(と言ってもずっと砂漠といえば砂漠なんだけど)、風景がどんどんと変わって来ていた。ちょっと丘が出てきたり、谷があったり。でも、砂丘はまだ見えず!
明日のお楽しみだな♪

私たちの他には一組フレンドリーなキャンパーがいるだけで、とっても静か。ちょうどローシーズンなんだって。ラッキー♪
二人で早速火をおこし、日が暮れる砂漠を見ながらBBQを堪能。
その後車の中の寝床を作り、翌日の早起きに備え、早々に床に着いた。

翌朝、5時起き!

早起きの理由は、砂丘が一番きれいに見えるのが、朝日と夕方だから。
この時間に見ると、光と影のコントラストがはっきり出るのと、軟らかい光の中だと砂のオレンジがきれいに映えるから。(日中だと、コントラストもないし、砂も光を反射して白っぽくなってしまうので、写真を撮るとのっぺり見えてしまう)


暗い中そそくさと荷物を車に乗せ、20km程先の砂漠への入場ゲートを目指す。
日が昇り始めるその頃、野生動物も朝食時間らしく、車を走らせているとKuduやOryxがおいしそうに草を食んでいる風景が見れた。

ゲートオープンもそんな早起き観光客のために朝早く、私たちが到着する頃には開いていた。
眠いのか普通のナミビア時間なのか、そこでチケットを発行する係員の人が異常に遅く、日が昇ってしまうのを恐れてる観光客はちょっとイライラ気味だったけど。

無事チケットをゲットしてすぐDune 45があるかと思いきや、更に45分ほど行かないといけないらしい。でも、もうこの時点で砂丘は右にも左にもいっぱい!

道端に車を止め、二人で砂丘を静かに見つめてみた。
ちょうど朝日を受け始めていて、まさにイメージしていた砂丘とぴったり。

Oryxと砂丘

更にしばらく行くと、漸くDune 45に到着。
入り口から45kmにあるから、Dune 45。見た目も高さも特に他の砂丘と変わらないんだけど、観光客は必ずここで止まる。理由は、これが唯一登るのを許されている砂丘だから。
そう、砂丘を登る…。
早起きのみならず、砂山を登るのかあ~。うーむ、ちょっと疲れちゃうな~と思ってしまった私。歩くの大好き、平坦な道は勿論、急な下りさえ苦にならないんだけど、登りは苦手なのよ~。
まあでも、ここまで来たら登らないわけにはいかない。みんな頂上まで45分だけって言うし。

丁度、大グループのキャンプツアーで来てる若い子達(と言っても私たちと変わらない20~30代)のグループが登り終えた後だったのか、私たちが登ろうとした頃には周りは誰もいなかった。
優しい旦那は「僕が先に登るから、足跡をなぞっておいで」と言って一歩先を歩いてくれた。
確かに、誰かの新鮮な(古い足跡だとだめ)足跡を辿る方が、100倍楽!こういう事に気を遣ってくれる旦那と結婚して本当に幸せだなあといつもながら感謝。
楽ちんに登ってちょっとズルしたけど、45分で頂上へ。

気づけば、見える限り、周りはだ~れもいない。砂丘を独り占め。
静寂の中、日が昇り、砂丘が色を変え、トカゲのかすかな足跡が増え、微風が砂粒をほろほろと転がして行って…。
昔、母が子守唄でよく歌ってくれた月の砂漠で子供ながらに想像していた砂漠がそこにあった。
感動。言葉も出ないくらい美しい…。


ローシーズンに来て良かった。静かだったから、時間をかけて砂丘を心いっぱいに吸収することができた。たっぷり40分ぐらいは頂上で座り込んでたかな。

Dune 45登りまーす
影がながーい


砂がさらさら
まだまだ砂丘は続くけど歩けるのはここまで

砂は細かく、さらさら。オレンジ色で、一粒一粒色にムラがなく、きれい。
日が昇るにつれて、砂が熱を帯びてくるんだけど、日を浴びている側と浴びていない側の砂は、10cm程しか離れていないのに、温度が10度近く違う。びっくり。
ふと斜面を見ると、トカゲが走り回ってるんだけど、これがかわいい。熱いらしく止まると片手片足を上げ、しばらくすると逆の片手片足をあげている。わかりやすくていいなあ。

あちち

あちち

段々暑くなって来たので、砂丘を降りることにした。
下りは楽!一気にダッシュで上から下まで駆け下りるだけ。
結構急なので走ってつんのめらないか心配だったけど、うまい具合にズボズボと足がはまって走っても平気。一年旅して穴の開いている靴には、上からも穴からも砂が入って砂を出すのがたいへんだったけど、楽しかった!所要時間、2分。登りと大違い。





砂丘前に止めた車の陰でお湯を沸かし、コーヒーを淹れていると、他の観光客が到着。
本当にタイミングよかったんだね、うちら。

さあ、まだまだこの国立公園、見所はある。
次は更に先のSossusvulei(ソーススフレイ)へ。
ここへは、最後の6kmは砂道で四駆じゃないと入れない。丁度うちらの車は問題ないのでそのまま行けたけど、他の観光客は国立公園が運営している4WDに乗り換えていた。Joeは、雪国で育ったので雪の上の運転は問題ないけど、こんな砂道(まさにビーチ)は初めてで、結構楽しんでたみたい。
この時点でまだ午前9時半なのに、温度はぐんぐん上がっていく。
ソーススフレイは、干上がった池。時々水があるらしいけど。太古の昔は海だったのか、塩分が残っていて、白っぽい。ちょっとウユニ塩湖みたい。
ここの周りはところどころに木が生えているんだけど、かろうじて生きているだけの様に見える。だって、幹とかカラカラなんだもん。暑いし、歩いてみても「まあ、ドライだね」ぐらいの感想しかなかったけど、ちょっと写真を撮ったりしてみた。

暑いねえ。帽子は必須。
Sossusvlei

次は、Deadvlei(デッドフレイ)。
ここ、行き着くまでが大変だった。
標識があるんだかないんだか、最初の入り口にちょろっと矢印が書いてあるだけで、後は荒野と砂丘が広がる一帯。他の人の足跡をたどってみるも、その内薄く消えたりして、迷った~!!ここは、ガイドがないと迷うぞ。もうちょっと標識増やしてほしいなあ。
この時点で、気温は38度近く。高い木もなく陰もなし。持ち歩いているペットボトルの水もどんどんなくなって行く…。
と、やっと砂丘の彼方へ消えていく足跡だらけの場所を発見。
それを辿ること30分…。

着いた~~~!!!
ここも、丁度私たちが行った時は誰もいなかった。
デッドフレイ…。その名の通り、かなりdead。
ここも元々池だったのが干上がった所だけど、ソーススフレイとは違い、今では全く水が来ない、砂丘に囲まれた隠れた一帯。
池だった名残で、地面は泥が干上がったもので、砂ではなく地面が割れて干からびている。
昔はきっと生き生きとしてた木たちも、今はその残す影もない…。死んでる…。からからに枯れて。折れた枝の先は突き刺すように鋭い。
また静寂の中で、その美しくぞっとするような光景を見てると、「地の果てに来たなあ~」と錯覚してしまった。

キマってるけど、実は道に迷ってる
Deadvlei見えた!小さく見えるけど、実はとても広い
カラカラの木
地の果てまで来たなあ
元気な旦那

またまた日ざしが耐え切れないくらい暑くなって来たので、車に戻ることに。
既に空になっていたペットボトルを片手に、息も絶え絶え、やっと駐車場に到着。
車の中でこんなに暑い…
ところが、喉はカラカラなんだけど、体の中で塩分が足りなくなっていたのか、これ以上水分が摂れない!これじゃあ、日射病になっちゃう…。と、ここで思い出したのがスポーツドリンクの粉末。
ペットボトルに注ぎ込むと、みるみるうちにメロン味の人工的な緑色に。普段は、人工着色料は大嫌いなんだけど、そんなことは言ってられない。早速飲んでみると…。飲める!ごくごく飲める。
スポーツドリンクのありがたさって、ちょっとのど乾いたくらいじゃわからないもんだと実感した。本当に飲みたくても水が飲めない時に、すごく役に立つ。持ってきて良かった~。

朝も早かったため、既にこの時点で疲れていた私たち。
でも、砂丘と砂漠を堪能できたので、まだまだ早い12時過ぎだったけど、帰ることにした。
ここから入り口までがまた遠いんだけど、涼しい風を受けながらのドライブだったので苦にならず。
すっかり日も昇り、砂丘は朝とは全く違う顔を見せてくれていた。朝日と夕日が良いわけがわかった気がした。光のせいで本当にのっぺり見えるんだもん。

うへぇ、やめて~
この日は、ソリティア近くの Solitaire Guest Farmでキャンプ。
ここもお勧め。やたら人に慣れてるSpring buckが訪問してきて、食べ物をせがんだりするけど。最初はかわいかったんだけどねえ。塩分が足りてないのか、腕を舐めまわされてちょっとひいてしまった。
ここは、草原を見渡す静かなキャンプ場。(メインは、ゲストハウスなので他の観光客は部屋にとまってたけど)
夕日を見ながらのワインとBBQはまた格別だった。



素晴らしい冒険に乾杯!
アフリカの夕日
こうして、私たちのナミブ砂漠冒険は終了。
この冒険は、1年も続いている旅の中でもトップクラスの思い出に残るものだった。
またゆっくり来たいなあ。もうちょっと涼しい季節に…。



● おまけ
これまたBuffyのお友達情報だったんだけど、小さな町、ソリティアにポツーンとあるガソリンスタンドの隣にある、小さな小さなベーカリーのApfelstrudel(apple strudel)はか~な~り旨い!入ったときは、「薄暗いけどこのベーカリー大丈夫?」と思ったけど、そんなのは杞憂だった。おいしすぎて、行きと帰りどっちも寄ってしまった。

world class apple strudel in Solitaire!



● 写真:ナミブ砂漠