2011年1月15日土曜日

South Africa : Namibian border : 悪夢の国境越え

[南アフリカ ~ナミビア国境~]

さよなら、テーブルマウンテン
島国日本で育った私。
インドネシアで幼少時代に8年も過ごしたけど、あそこも島国だった。

島国で育つとなかなか経験できないのが、陸路での国境越え。
別に悪いことしてるわけじゃないのに、出入国手続きのために並んでるといっつもどきどきする。
空港でイミグレーションを通るのとはまた違う緊張感。
陸路では、もし次の国に入れなかったら、バスや電車は待ってくれないという恐怖がある。
いつも英語が通じるわけじゃないという恐怖もある。
特に、国境に町がない場合は、次の交通手段の手配をどうしたらいいかわからないし。泊まる所もないし。

この旅で幾度も繰り返してきた陸路の国境越えだけど、やっぱりこれだけはまだ慣れない。

Cape Town(ケープタウン)からバスで10時間ほどで、南アフリカ~ナミビア国境に着く。
ここは、町もない、荒野の中にポツーンと入出国審査のオフィスがあるのみの小さな国境。
まずは南アフリカ側の国境でバスを降りる。丁度日も暮れ、周りは段々と闇に包まれてきている。

バスでナミビアへ!
前の方の席に座っていた私たちは、素早くバスから降り、出国審査の列でも前のほうに並べた。ラッキー!
一人目、二人目…と順調に列は短くなっていく。
「Next」
私の番が来て、パスポートを渡す。順調に「ドン、ドン」と出国のスタンプを押す音が聞こえ、まもなくパスポートが返ってきた。
次はJoeの番。これも問題なし。
あっけなく出国審査終了!まだまだ長い列を横目に外に出た。

ところが、このままいつも通りバスに戻ってみんなが終わるのを待つんだろうと思いきや、隣の警察のオフィスに行くよう促された。
完全に出国する前に、みんなこの警察でも審査を受けないといけないらしい。
出国スタンプを貰ったという事は、もう南アフリカを正式に出国したはず。なんでまだ何かあるんだろう?と思ったんだけど、まあ仕方ない。

トイレ休憩で立ち寄った所。周りは何も無い
先ほど前に並んでた人達が警察のデスクの前に並んでいる。静かなオフィスで強面の警察官がパスポート情報をPCに入力し、画面を睨んでいる。それでも一人一人の審査は短く、どんどんと列が短くなっていく。
「Next」
私の番。
パスポートを渡す。カチャカチャ...。
PCの画面から警察官が目を離し、おもむろに
「Please stand aside.」(横で立って(待っていて)ください)と。
なんでじゃ~?
まあ、今まで列にいたのは南アフリカ人パスポートの人ばっかりで私のは珍しい日本パスポートだからかな?と納得し、列から外れ、横で待つことに。
次のJoeも横で立ってるように言われ、二人で次々と短くなる列を観察。
折角列の前のほうに並べたのにな~、残念!なんて思いながら。

立たされてる理由はわからないけど、早く終わらないかな~と引き続きどんどん短くなる列をみてると...。
あれ?あのドイツ人たちはすんなり通ってるぞ?外国人っていう理由じゃないのかな?と、立たされてる理由が謎に包まれていく。そう、全ての外国人が対象というわけではないらしい。
それを証明するかのように、とっても人の良さそうな背の高い25才位のヨーロッパ人の男の子に加え、南アフリカ人の女性とその小学生低学年くらいの子供二人も私達と一緒に待ってるように促されていた。

ハプニング:砂漠を走るこのバスでクーラー故障。
高級バスなので窓が開かないタイプで茹でダコ状態
そして、15分経ったころには、Joe、私、ヨーロッパ人、南アフリカ人+子供二人と警察官二人のみがオフィスに残され、更に静まり返っていた。
待たされた私達6人は、お互いちょっとナーバスながらも大したことは無いだろうと、顔を見合わせて小さな笑みをかわした。

ここで、まずは女性が警察に呼ばれた。
二人がしゃべってるのは、Afrikaans(アフリカーンス語というオランダ語から派生した言語)なのでほとんどわからない。
でも、あれあれ、二人の会話はヒートアップしていく。お母さんの方はどんどん顔が蒼ざめていってる。何が起こってるんだ?!ドイツ語に似てる言葉を拾うと、どうも小さい方の子供について話しているらしい。
ここで、ふっとわかる言葉が耳に飛び込んできた。
「......... "missing child"(行方不明の子供) ............ Mann(ドイツ語だと夫という意味) ...(はどこにいるんだ?)...」

広い荒野が延々と続く
え~~~????もしや、このお母さんに見える人、子供を誘拐した容疑をかけられている?!
お母さんのジェスチャーを見ていると、「でも、でも、この子の目は私に似てるでしょう?」と言っていたり、何か親子だと証明できるものをバッグの中を探したり...。
もはや何が起きているのかわからなくなってきた。
少しパニックに陥ってきたお母さんに警察は後で詳しく取り調べるから待っていなさい、というような事を言っている。


そして次。
警察官はヨーロッパ人の男の子に振り返り、英語で尋問を始めた。
警:「Where are you from?」(出身国は?)
男:「from Finland」(フィンランドです)
警:「How long were you in South Africa and where were you?」(南アフリカの滞在期間と滞在先は?)
男:「I was in Cape town for 4 days, staying in a hotel.」(ケープタウンに4日間、ホテルに泊まっていました)
トイレ休憩
警:「Hm... You have a record here on my computer that you were selling drugs. You have been wanted by police in Capetown.」(ふむ。コンピューターの記録を見ていると、君は麻薬の売買をしていたとなっている。ケープタウンの警察があなたを捜しているみたいだ)
男:「What?!?!?! I did no drugs!」(え?麻薬なんてやっていません!)
警:「But this computer record says you did. There is nothing I alone can do... This matter should be handled by my boss tomorrow morning. We have to detain you here tonight.」(でもこの記録ではそうなっている。私の力では何もできないので、明朝私の上司の指示を仰ぐしかない。それまで君を拘束させてもらう」
男:「No way! I don't understand. I have to get on this bus!!」(なんだって?!僕はこのバスに乗らなきゃいけないんだ!)
警:「Well, let me talk to these guys first.」(ちょっと待ってなさい。まずこの二人に話させてくれ。)

人の良さそうな彼の顔が見る見る興奮して赤くなってきた。怒っているのではなく、パニック状態。

と、今度は警察官が私たちの方に厳しい顔を向けてきた。
もう一度私達のパスポート番号をPCに入力し、画面を睨んでいる。
この時点では、もう何がなんだかわからない私達。手には冷や汗がびっしょり。

警:「Actually, it's a similar story for you two.」(実は、君達も似たような容疑がかかっている)
私達:「What do you mean?」(どういう事ですか?)
警:「Where were you in South Africa and what were you doing?」(南アフリカでの滞在期間と滞在先は?)
私達:「We were staying with a friend's family in Cape Town for 5 days.」(ケープタウンの友達の家族と5日間過ごしました)
そしてまた荒野。日が暮れてきた。
警:「Our record says that you are also wanted by police, as you were trafficking drugs. I see stamps from all over the world on your passports.」(我々の記録によると、君達も国際的な麻薬の密売をしていたとなっている。その証拠に世界中の入出国スタンプがパスポートにある)
私達:「No!!! Impossible! We have nothing to do with drugs. We can give you the phone number of our friend's so that you can call and they can prove that we were not doing anything illegal!」(そんなはずはないです!なんなら私たちがお世話になった友達の電話番号を渡しますよ。滞在期間中何も違法なことをしていないと証明してくれるはずです。)
警:「I have to detain you, too, until our boss comes back tomorrow morning.」(私個人には何もできないから、君達も私の上司が明日出勤するまで拘束させてもらうしかない)


この時点でもう私たちの頭は真っ白。
なんで?誰か私たちのIDを盗んで麻薬の密売をしている?それともこの警察は賄賂がほしいのかしら?なんで?なんで?
こんな荒野の真ん中で拘束されるってどういうこと?
このコンクリートの小さい建物に牢屋があるってこと?
明日釈放されたら、ここから先に行くバスはどうやって手配すればいいの?
それにしても、世界一周しているからスタンプが多いのは当然。
早くカウチサーフィンさせて貰ったLuに連絡して無罪を証明してもらわなきゃ。
電話番号、電話番号...。
...もう、パニック状態。


おっ、ちょっとした山が。でもやっぱり荒野が続く
ショックで蒼ざめた私たち4人は(子供は何が起こっているかわからない様子)、困惑しながら依然として厳しい顔をしている警察がかちゃかちゃと私たちのパスポートの番号を打ち込みながら、画面を睨んでいる警察を見守っていた。

3分経過...。時計の音だけが部屋に響く...。

そして、ふと顔をあげた警察官。
あれ?いたずらっぽい笑みが満面に...?!
「I'm kidding!!!!!!!!!!!!!!!!!!! Here are your passports!」(うそだよーーーん!!!はい、パスポート!)

オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーイイ!!!!!!コラァーーーー!!!!

一気に力が抜け、カウンターまでパスポートを取りに行く数歩はふらふら、パスポートを受け取る両手はぶるぶる震えていた。
怒りと安堵で心が満ち、複雑な表情でパスポートを受け取り、外へ。
その内、ま、いっか~と、怒りも消えうせたけど。

20分のドラマを終え、外に出ると、みんなは税関で荷物チェックを受けていた。
バスの添乗員さんが心配そうに「どうしたの?大丈夫だった?」と聞いてくれた。事情を説明して、「こういうことって過去にもあるんですか?」と聞いたら、「そうなの、時々あるのよ~」と。うちらだけが犠牲者じゃないのね。

ナミビア側の国境は、真面目一辺倒で、笑顔ひとつもくれない入国審査だったけど、すんなり終了。
こうして、思いがけないハプニング付きの国境越えも無事終了。


ここで、なんでうちらだったのか、と考えてみる。
多分、アフリカーンスか英語がしゃべれて、冗談のわかりそうな、人の良さそうな人をわざと選んだんじゃないかと思われる。うちら6人の内誰がキレたとしてもそんな害がなさそうだし。怖そうなドイツ人3人組は選ばれてなかったし。


ハプニング:楽しみにしてたエアロが
Joeのお尻の下敷きに
さて、今まで幾度と無くいろんな人たちにこのドッキリ話をしてきたけど、みんな反応はそれぞれ。
大笑いする人、怒り出し「信じられない、誰だ、その警察。訴えるべきだ!」という人。
確かに、訴訟大国のアメリカではすぐ訴えるんだろうなあ。

でもね、確かに怖い思いしたけど、あの人達は、あんな荒野の中でスタンプを押すだけのために一年中すごしている。
仕事だと言えばそれまでだけど、逆に、私達はユーモアを忘れずに単調な仕事をしているこの人たちの、些細な娯楽に貢献したと思えば別にいいじゃないかと許せる。
そして何といっても、私たちにとっても他の人に話せる面白旅話が増えたし。
別に私たちにも彼らにも害があるドッキリではなかった。今では笑って話せるウケル話。

怒るのは簡単だけど、こんな害の無い事に怒ってどうする?何が変わる?
状況を変えられないなら、自分が変わったほうが良い。自分の見方を変えた方が良い。
人生、ポジティブに物事を見れるほうがハッピーに生きれるもんだよね。


● おまけ:こんなハプニングはあんまりないけど、準備は必要。国境越えについてまとめました!

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